<別紙:意見書> |
はじめに |
平成12年11月30日、公正取引委員会の「政府規制等と競争政策に関する研究会」(郵便事業に関するワーキンググループ、座長・鶴田俊正専修大学教授)は、郵便事業に関し、自由競争の促進を基本に、市場における事業の独占を可能な限り排除することを骨子とした報告書「郵便事業への競争導入と競争政策上の課題」を提言しておりました。 しかし、平成15年4月1日、日本郵政公社の発足と同時に施行された「民間事業者による信書の送達に関する法律(以下「信書便法」といいます。)は、前述の提言が反映されず、官である総務省が、民間事業者の事業の細部に至るまで許認可を行い、同じく官である日本郵政公社の事業形態に民間事業者を合わせようとする「民間官業化法」でありました。 このような、信書便法の下では、自由かつ公正で公平な競争ができず、民間の斬新で柔軟な発想のもとでの新たなサービスの提供は期待できないため、国民への利便性の向上につながらないと考え、当社は今日まで信書便事業に参入しておりません。 今般、平成19年10月に予定される郵便事業の民営化にあたり、公正取引委員会があらためて平成18年4月21日付「郵政民営化関連法律の施行に伴う郵便事業と競争政策上の問題点について」の報告書(案)を発表されましたので、当社は、前述の経緯を踏まえ、下記のとおり意見を申し述べます。 |
記 |
1.信書便および信書便法ありきの議論について |
今般、公正取引委員会から出された、「郵政民営化関連法律の施行に伴う郵便事業と競争政策上の問題点について」の報告書(案)では「市場における競争原理の推進が消費者の利益につながる」と述べられています。この公正取引委員会の競争促進の姿勢とそれによる消費者への利益還元の考え方は、公平、公正な競争条件の下、創意工夫をもって新商品を開発し、消費者の利便性向上に努めてきた当社の企業理念とも合致するもので、大変共感を覚えています。 しかしながら、同報告書(案)の議論が、まず信書便法ありきで、信書便事業への参入条件緩和の提言に終始していることに当社は異議を申し述べます。 なぜなら、当社は、信書・非信書の区別を行うことなく、原則取扱い自由とすべきだと考えているからです。取扱い自由となった場合、消費者は運送事業者を自由に選択する権利を持ちます。そこで事業者間で競争が起こり、事業者には競争に勝ち抜くため創意工夫が生まれます。その結果、サービスの向上による売上げ増や業務効率化による経費削減効果が生じ、新たな利益が生み出されることになり、それを原資として消費者に新たなサービスの提供という形で還元され、国民の利便性が飛躍的に高まる良い循環につながるものと考えています。 又、郵便事業を全面開放した場合は、郵便法第5条に定める独占規定の撤廃により、信書便法も不要となります。なぜなら、すべての貨物の取扱いは、運送事業にかかる国の法律である貨物自動車運送事業法や貨物利用運送事業法の適用で十分に対応できるからです。 よって当社は、郵便事業を全面開放し、運送事業者の参入障壁を完全撤廃することが、 競争原理を推進し、結果として消費者の利便性の向上につながるものと考えています。 |
2.郵便ネットワークについて |
郵便ネットワークは、明治時代より国営事業としての郵便事業を維持するためのものでありましたが、そのネットワークは国民全体の共有財産であり、日本郵政公社の専有物ではないと考えています。 従って、そのような基本的な考えを前提とした上、平成19年10月の民営化後、郵便ネットワークを承継する予定の「郵便局株式会社」に対し、郵便ネットワークを開放させることについては賛成します。ただし、国民の税金でまかなった郵便ネットワークへの接続料は、民営化後に予定される郵便事業株式会社と同一条件で、いつでも、誰でもすべての民間事業者に平等に提供されることが肝要と考えます。 そのためには、郵便ネットワークを運営する郵便局株式会社の中立性と透明性を担保する仕組み、例えば、第三者機関によるチェック体制をきちんと整備しておく必要があると考えています。 |
3.ユニバーサルサービスの維持について |
郵便事業における「ユニバーサルサービスとは何か」、が今もって具体的に定義されていない中、その維持にかかる保護策(基金、補助金、リザーブドエリアなど)について提言されていることに当社は違和感を感じています。なぜなら、ユニバーサルサービスの範囲について拡大解釈がなされ、過剰な保護策が講じられることは、「市場における競争原理の推進」を阻害し、「消費者の利益」を奪うことにつながるからです。 まず国民生活において、最低限必要な「ユニバーサルサービス」とは何を指すのか、その範囲や事情を明らかにし、当該サービスのため、具体的にいくらのコストがかかるのかを公開し、透明性を確保することが是非とも必要です。その上で、ユニバーサルサービスにかかる保護策そのものが必要かどうかの議論があり、その結果、是非必要であると判断された場合に、国民全体にとって一番コストが低く見込める対策を選択できるのではないかと考えています。 |
4.まとめ |
本来、「官業とは民業の補完」となるべきものであり、民業だけで国民の利便性が満たされていると判断できる場合は、官業はその役割を終えるか又は必要最小限に縮小するのが国民生活に有益であると考えます。 民営化前に、さまざまな手法を用い民業を圧迫しながら営業拡大を図る日本郵政公社の姿勢について、当社は、国家及び国民にとって有害であり本末転倒であると考えています。したがって、平成19年10月以降成立する民営化会社は、競合する民間事業者とあらゆる面で完全なイコールフッティングが確保されることが最低限の条件であると、当社は主張いたします。
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以 上 |
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