平成14年11月8日 ヤマト運輸株式会社 |
1.はじめに |
当社は、「信書便法」が成立する本年7月以前より、同法の許可事業者にはならない旨を表明しており、その意思に変化はない。 同法は、国家による事業の独占を維持しつつ、一部の民間企業を囲い込むという、いわば民間を官業化する法律であり、国民の利便性を向上させるという規制緩和の理念に逆行するものだからである。 そもそも、信書の送達事業が国家の独占とされた背景には、ネットワークの構築・維持に巨額の投資が必要であり、民間企業が未成熟で、効率的かつ可及的速やかにネットワークを整備するためには国家事業として取り組まざるを得なかったという歴史的実態があった。 しかし、ネットワークが高度に発達した現代においては、国家による独占をできるかぎり排除し、民間にできることは民間に任せ、規制を緩和すべきである。 当社は、郵便事業の規制緩和、民間参入とは、信書の国家独占の撤廃(郵便法第5条の撤廃)あるいは独占領域の縮小にほかならないことを主張してきた。そして、郵便法第5条の撤廃が実現しないのであれば、利用者の誰もが納得できる形で、信書の定義を明文化すべきであると主張してきた。 |
2.信書の定義とその範囲について |
先般、郵便法の改正により、第5条第2項に信書の定義が明記されたが、法律上の定義は、事柄の性質上、抽象的・概括的に留まるため、実務運用上、信書・非信書のボーダーラインを引くのは難しく、信書の範囲が不当に拡大解釈されるおそれがある。 当該指針(案)は、そうした危険を防ぐべく、信書・非信書の区分を具体的に例示する目的で提示されたものと理解する。 しかし、当社は、信書の範囲が最大限に拡大されている点と解釈が恣意的である点から、当該指針(案)には賛成できない。 |
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3.当該指針(案)の信頼性・公正性について | |
当該指針(案)に記載されている解釈の大部分は、旧郵政省時代の事務通達や解説書に記載されていた内容をそのまま踏襲しており、民間企業と競争状態にあった郵便事業の当時の事業主体が一方的に判断・解釈した内容そのものである。 今後、総務省と郵政公社は分離されるとはいえ、旧郵政省時代は久しく一体であり、同根とも言える関係にある。その当事者である総務省が、郵政公社と民間企業との今後の競争状況に大きく影響する、信書と非信書の区分のような重要な問題を、一方的に判断・解釈することは、信頼性や公正性の観点から大いに疑問が残る。 というのも、当社は、過去に、クレジットカード、地域振興券、商品の広告を目的としたダイレクトメールなどの配送をめぐって、信書を恣意的に拡大解釈した旧郵政省から、執拗な営業妨害を受けたからである。 |
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4.信書に該当する文書の例について | |
当社は、信書とは、常識に照らして、はがき・手紙の類のみと判断している。 当該指針(案)では、その他多くの文書を信書に該当するとしているが、特に、「ダイレクトメール」と「紙以外の有体物」については、次の理由から信書にあたらない物品として、特に言及しておくことにする。 |
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(1)ダイレクトメール | |
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(2)紙以外の有体物 | |
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5.総括 | |
信書・非信書の区別を判断する場合には、信頼性と公正性を保つべく、公正取引委員会のような中立的な第三者機関が、郵政公社・民間企業・利用者の意見を充分聴取したうえで、利用者の便宜を最優先に考慮して決めるべきである。 また、第三者機関が判断する場合にも、社会の意識・慣行が変化していることやネットワークが発達していることにも配慮したうえで、利用者の立場にたって、誰が見ても分かりやすく、多様な解釈の余地がないよう、信書の範囲は必要最小限(「はがき・手紙の類」など)に留めるべきである。 なぜなら、自由な競争環境のもとで、多数の民間企業が創意と工夫をこらしてサービス開発競争を展開することこそ、利用者にとって選択肢が増え、結果として利便性が向上することにつながるからである。 このことは、宅急便の開始以来、利用者の要望を満たすことを第一に考え、創意と工夫をこらし、ライバルと切磋琢磨してサービス競争を展開してきた結果、利用者の利便性が飛躍的に向上し、市場全体も拡大したという過去の事実から明らかである。 よって、利用者の利便性を向上させるという規制緩和の理念を真に実現するために、当該指針(案)が撤回され、中立な第三者機関を中心に、広く関係者の意見を聴取しながら、利用者にとって確保されるべき必要最小限の信書の範囲が提示されることを強く主張する。 |
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以上 |
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