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特集1:路線バスを活用した宅急便 / 「客貨混載(きゃくかこんさい)」で、地域のお困りごと解消と宅急便サービスの向上を両立

社会課題

地方都市の沿岸部・中山間地域などでは、自家用車の普及や都市への人口流出などにより、公共交通の利用者数が減少傾向にあります。特に路線バスにおいては、年間で4〜500路線が減便・廃止されるという状況が、2014年頃から続いています。

中山間地域ではバス路線網の維持が課題に

グラフ:路線バス廃止のあった市区町村数と路線数

宮崎県の西部に位置し、山林に囲まれる西都市(さいとし)東米良(ひがしめら)地区と西米良村(にしめらそん)は、年々人口が減少し、高齢化率も約40%になるなど、県内でも特に過疎化や高齢化が進んでいる地域です。こうした地域の高齢者などにとって、都市部への公共交通手段として路線バスが重要な役割を果たしています。しかし、路線バスを運営する宮崎交通株式会社にとって、利用者が少ない路線の生産性を向上させることは非常に難しい問題となっていました。

一方、ヤマト運輸では西都市から両地域のお客さまへ宅急便を配達する際、西都市にある西都宅急便センターから約50kmの道のりを約1時間半かけて移動していました。また、西都宅急便センターに戻る時間を考えると、両地域のお客さまからの当日発送の荷物の集荷受付締め切り時間は15時ごろにせざるを得ず、お客さまにご不便をおかけしていました。

図:保冷専用BOXを搭載した路線バスの運行フロー

バスの空きスペースを有効活用する「客貨混載」

こうした課題を解決するために、ヤマト運輸は、西都市と西米良村を結ぶ路線バスで宅急便を輸送する「客貨混載」を提案しました。これは、既に地域を走る路線バスの座席を一部減らし、空きスペースを確保して、「バスの乗客(客)」と「宅急便の荷物(貨)」を「混載」して運ぶというものです。

まず、ヤマト運輸のセールスドライバー(SD)が、両地域のお客さまに配達する荷物を、西都宅急便センターから宮崎交通の西都バスセンターに運び、路線バスに積み込みます。この荷物を路線バスが運び、途中にあるバス停留所で、それぞれの地域を担当するSDに引き渡します。

図:客貨混載による3者のメリット

宮崎交通、ヤマト運輸、地域住民、3者にメリット

この取り組みは、3者それぞれにメリットがあります。

宮崎交通は、路線バスの空きスペースで宅急便を輸送することで、バス路線の生産性を向上し、路線網の維持につながる新たな収入源を確保することができます。

ヤマト運輸は、両地区を担当するSDが西都宅急便センターに戻る必要がなくなるため、現地に滞在できる時間が増え、当日発送の集荷締め切り時間を17時まで延長できます。また、集配車両の走行距離を削減できるため、CO2の排出量も低減できます。

そして地域住民の方にとっては、路線バスの路線網が安定的に維持されることで、都市部の病院やスーパーなど多様な施設へアクセスでき、生活基盤の維持・向上につながります。また、SDが両地区に滞在できる時間が増えるため、お客さまからの配達時間の変更などのご要望にも、より柔軟に対応できるようになります。さらに、集配時にお客さまの異変に気づいた場合、自治体に連絡する「見守り支援」も行うことで、地域住民の生活サービス向上にもつなげることができます。

第13回 エコプロダクツ大賞「環境大臣賞」を受賞

2016年12月、エコプロダクツ大賞推進協議会主催の第13回エコプロダクツ大賞において、路線バスを活用した宅急便輸送「客貨混載」の取り組みが「環境大臣賞」を受賞しました。

トラックで運行していた区間の一部を路線バスに切り替えて輸送することによって、CO2排出量を低減したこと、また、より地域に密着したサービスを行っていることなど、環境負荷低減に留まらない幅広い効果を生み出したことが評価されました。

写真:第13回 エコプロダクツ大賞「環境大臣賞」を受賞

図:客貨混載を運用中の路線バス

全国で客貨混載の取り組みを拡大

宮崎県内では、現在3路線で「客貨混載」の取り組みを行っています。2017年1月からは、西都市―西米良村間で「客貨混載」では日本初の「クール宅急便」の運用を開始しており、地域の特産品の出荷などに活用いただいています。新鮮な特産品の出荷が拡大できれば、地域産業の活性化にもつながると考えています。

また、現在では、宮崎県のほか北海道、岩手県、熊本県、兵庫県でも、各地の自治体、事業者などと協力しながら「客貨混載」の取り組みを行っています(2017年6月時点)。ヤマトグループは今後も、さまざまな視点から、高齢化や過疎化が進む中山間地域等における課題解決と地域活性化に取り組んでいきます。

ステークホルダーの声

より地域に貢献できる路線バスへ。

今回の提案をいただいた当初から、ヤマト運輸、当社、そして地域の皆さまにメリットとなる点が多いということで、前向きに検討していました。一方で、荷物の積み込みによって路線バスの運行に支障が出るのではとの懸念があったことも事実です。

運用にあたっては、ヤマト運輸がバスの運行時刻に合わせてくださっているお陰で、従来の路線バスのお客さまにもこれまでと変わらずご利用いただけています。取り組み開始後、お客さまからは良いアイデアだとご評価いただきました。「クール宅急便」の運用を開始するにあたっては、ヤマト運輸と共同で、長時間の運搬でも鮮度を保つことのできる専用の蓄冷材などを検討しました。

地域に貢献できる路線バスとして、今後もヤマト運輸と新しいことに取り組みたいと思っています。

写真:宮崎交通株式会社 乗合部 部長 尾上 勝政 様

宮崎交通株式会社
乗合部 部長
尾上 勝政 様

今後のサービス拡大にも期待しています。

西米良村の人口は県内で最も少なく、1,000人ほどです。今後、この地域はさらに高齢化が進み、都市部のスーパーや病院に行くのにバスを利用する人が増えてくると思います。そうしたなかで、バス路線が維持されることは住民にとって意味があると思います。また、買い物が困難になる方が増えれば、買い物支援サービスなども必要になってくると思います。

宅急便の最終集荷時刻が延長されたことによって、生鮮品などを出荷する事業者から便利になったとの声を聞きます。地元の特産物である柚子や鮎、西米良サーモンなどの出荷が今後増えてくれば、地域の活性化にも繋がると期待しています。

写真:西米良商工会議所
会長 坂本 九州男 様

西米良商工会議所
会長 坂本 九州男 様

社員の声

蓄積したノウハウを他地域にも展開。

先に運用を開始した岩手県での客貨混載バスは、県内外の荷物が集まるベースと呼ばれる仕分け拠点と営業所との間の配送が主でしたが、宮崎県での取り組みでは、お客さまの軒先までの配送部分を客貨混載バスが担っているのが特長です。

当社としても、往復で約3時間かかっていたSDの移動時間を減らせたことで、ドライバーの負担軽減にもつながっています。また、最終集荷時刻が大幅に延びたことも、お客さまから好評をいただいています。そうしたなかで、地域の特産品など温度管理が必要な荷物が増えてきたため、保冷専用の荷台スペースを設けた客貨混載でのクール宅急便の運用も開始しました。日本初の取り組みとなりますが、ここで蓄積したノウハウを他の地域でも展開できればと考えています。

写真:ヤマト運輸株式会社
宮崎主管支店 営業企画課
課長 佐藤 裕士

ヤマト運輸株式会社
宮崎主管支店 営業企画課
課長 佐藤 裕士

CSRの取り組み

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